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【保存版】飲食店開業前に必ずチェック! 消防署への手続きと防火管理者講習

2025年07月10日 21:30

こんにちは。食品・飲食業界を応援する行政書士の林芳樹です。

現状の防火管理に関する法令等を再確認し、防火管理の適切なアドバイスができるように

令和7年6月6日、7日の二日間(10時から16時まで)、甲種防火管理者講習会に参加してきました。

これから飲食店を始めようとしている皆様にとっては、内装工事や厨房設備の選定、 メニュー開発など、

準備は山ほどあると思います。しかし、ここで一言申し上げます。

「消防署への手続き、キチンと押さえていますか?」

「消防関係の準備って、立ち入り検査だけじゃないですよ。」

実は、消防署への届出や講習受講は、飲食店を営業するうえでとても重要なステップなんです。

怠ると営業停止や指導対象になることもあり得ます。

今回は、講習を受けて消防署の予防担当職員から直接ヒアリングした情報をもとに、

飲食店開業に 必要な消防手続きの基本と、防火管理者講習の受講方法をわかりやすくまとめました。

ぜひ保存版としてご活用ください。



飲食店を開くときに必要な「消防署への手続き等」

飲食店を始めるとき、多くの方が「保健所の営業許可」や「食品衛生責任者」については 調べますが、

消防署とのやり取りは後回しになっていませんか? 実はとても重要な手続きや書類がいくつもあるんです。

消防署に関係する主な手続き等は以下4つの事項が考えられます。

1. 防火対象物使用開始届出(使い始めることの届出)

2. 消防用設備の設置届(消火器や火災警報器などの報告)

3. 防火管理者の選任

4. 講習受講

これらは「自分のお店をオープンする直前にやればいいや」と思っていると 間に合わないことも有り得ます。

遅くとも開業の1ヶ月位前には、確認しておくことを強くおすすめします。


1. 防火対象物使用開始届出書

この届け出は、例えば、「8月8日からこの建物で飲食店を始めます」と、 あらかじめ消防署に伝えるものです。

提出先:店舗所在地を管轄する消防署

提出時期:使用開始の7日前まで

提出者:オーナー本人または管理責任者

ビルの一室を借りて開業する方はもちろん、民家の1階を改装して焼き鳥屋を始める場合も対象になります。

たとえ小規模でも、人が集まる「防火対象物」として使う以上、届け出が必要です。


2. 消防用設備の設置届

飲食店では、火を使う厨房があるため、消防設備の設置が義務づけられます。

具体的な例を挙げると、 消火器(ABC粉末タイプなど)、 火災報知器(自動火災報知設備や住宅用火災警報器)、

排気フードの防火ダンパーや自動消火装置(フライヤー使用時)などがあります。

これらを新たに設置する際には、「設置届出書」などの書類が必要です。

設置作業を行う設備業者が代理で提出するケースも多いですが、誰がどこまでやって くれるのか、

早めに業者に確認しておきましょう。


3. 防火管理者の選任

ここが少しややこしいところですが、大切なポイントです。

防火管理者には「甲種防火管理者」と「乙種防火管理者」の2種類があります。

注意、防災管理者とは違いますので、念のため。

飲食店の場合、以下のどちらかに該当する場合は「甲種防火管理者」を選任しなければなりません。

・店舗内に10人以上の従業員(常勤・非常勤含む)がいる

・収容人数(椅子・席数など)30人以上である

つまり、ちょっと広めのカフェや居酒屋、業務に従事する人として、 家族だけでなくてアルバイトを複数人雇う

店などは要注意です。

これに対して、乙種防火管理者で対応可能な例を示しますと、防火対象物が

・地階を除く階数が3階以下である ・延べ面積が300㎡(約90坪)以下 である

・従業員が少なく、収容人員が30人未満である

つまり、小規模な飲食店(例えば延べ面積30坪くらいの喫茶店やラーメン店)で、

従業員が数人、客席も10~20席程度といった場合は、乙種で対応可能なケースが多いです。

ただし注意すべき点としては、 同じビル内に他のテナントが入っていて建物全体が複雑な用途構成に

なっている場合や、 ビル全体で見ると300㎡を超える大きな防火対象物に含まれる場合などは、

乙種防火管理者では対応できないことがあります。

そのため、乙種防火管理者で対応可能かどうかは物件の構造や規模、用途構成により異なります。

必ず事前に、店舗所在地の消防署へ相談して確認するのが安心です。

そして、防火管理者選任届を出す場合には、自分のお店に応じた、消防計画や自主点検チェックリストも

セットで届出する必要があります。なお、より細かな詳細は各所轄の消防署にご確認してください。


4. 講習受講

防火管理者に就任するためには、消防署指定の講習を受ける必要があります。

防火管理者講習の受講方法 防火管理者講習には「甲種」と「乙種」の2種類があります。

一般的な飲食店では「甲種防火管理者」講習の受講が推奨されます。

大阪市のホームページから検索して、申し込みができます。

講習会の日程表を確認して早めに申し込むことがお勧めです。 けっこう、すぐに空きがなくなる感じです。

乙種防火管理者は、一日間の受講で、6,500円

甲種防火管理者は、二日間の受講で、8,500円

会場での講習の他に、オンライン講習会もあるようです。

私の場合は、実際に天王寺の阿倍野フォルサに出向いて受講してきました。

講習会当日は、本人確認書類(運転免許証など)が必要になります。

指定日に講習を受講して、その日に修了証が交付されます。

取得後は、防火管理者選任届出書を消防署に提出して完了です。

ちなみに、2日目の午後に、消火器の使い方や、実際に消防ホースから水を出して、的にあてる訓練も実践し、

なかなかできない体験をさせて頂きました。

補足 営業開始前の「立入検査」 消防署から営業前後に立ち入り調査があることもあります。

怖いものではなく、「安全対策がちゃんと取れているか」を一緒になって確認してくれる機会です。

よく見られるポイントは以下の通りだそうです。

・消火器は正しく設置されているか

・火災報知器が動作するか

・避難経路や非常口が確保されているか

・ガス・電気機器の使い方が安全か

準備を整えていれば問題ありませんし、改善点があればその場でアドバイスしてもらえます。

消防署への届出や講習受講は、「安全な営業」のための第一歩です。 届け出を怠ったり、講習を受けずに営業を開始すると、後からトラブルや指導の対象になることも有り得ます。 でも安心してください。消防署はあなたの「敵」ではなく、安全営業の心強いパートナーです。 私もいくつか講習会で質問したとき、他に、分からないことがあれば、ぜひ所轄の 消防署の予防課に相談をしに来て下さいと言われました。丁寧に対応してくれてありがたかったです。


最後にひとこと

飲食店の開業は、夢の実現に向けた大きなステップだと思います。 でも、安全と安心があってこそ、はじめてお客様に喜んでもらえるお店になります。 「消防手続き」はお客様の安全を担保するための取り組みです。 どうか面倒がらずに、ぜひ前向きに取り組んでみてください。 それでは、あなたの飲食店の成功を心から応援しています!