あなたの工場は“大量調理施設基準”を満たしているか?簡易セルフ診断チェック
2025年08月22日 12:27
食中毒事件とともに強まる監視
近年、大規模な食中毒事件が報道されるたびに、業界内では
「またか……」と重苦しい空気が流れます。中でも特に注目されるのが、
給食・弁当・仕出し料理などを大量に調理する施設です。
一度の事故で影響を受ける人数が数百人〜数千人にのぼるため、
行政のチェックも年々厳しくなっています。
現在、一定の規模を超える施設は「大量調理施設」として、
特別な衛生管理基準の対象になります。
「うちはまだ対象じゃない」と思っていても、基準を満たしていなかった
という例は珍しくありません。
本記事では、厚生労働省の通知に基づいた内容をベースに、
チェックリスト形式で自社工場の対応状況を
自己点検できるように構成しています。
「大量調理施設」基準の概要(厚労省通知より)
「大量調理施設」とは、以下のいずれかに該当する施設を指します。
(厚生労働省通知 令和5年3月30日最終改訂)
提供する食事が、
・1回の提供が750食以上
・1日の提供が3,000食以上(合計食数が基準)
また、提供するメニューの性質や対象者(高齢者、乳幼児等)によっては、
規模に満たない場合でも準用されるケースがあります。
この基準を満たした施設は、以下のような特別な衛生管理体制が求められます。
・ 加熱 → 急速冷却 → 提供の明確なフロー
食材の加熱は中心温度75℃で1分以上が基本
調理後2時間以内に20℃以下、4時間以内に10℃以下へ冷却
配送中の保冷・保温温度も記録対象
・ 温度記録・調理記録の保存
原材料の受入温度、加熱温度、冷却温度などを記録用紙または電子データで保存
保存期間は原則1か月以上(自治体によって異なる場合あり)
簡易セルフ診断チェックリスト:あなたの工場は大丈夫?
以下のセルフ診断項目で、自社の現在の運用が「大量調理施設基準」に
どれほど対応できているか確認してみましょう。
【調理器具の管理】
調理器具は「使用前・使用後」に洗浄と消毒が行われている
(はい・いいえ)
まな板、包丁などは食材別に色分けまたは用途区分されている
(はい・いいえ)
使用記録や消毒履歴を定期的にチェックしている
(はい・いいえ)
【作業員の動線】
汚染区域(下処理室)と非汚染区域(加熱調理室)が構造的に分離されている
(はい・いいえ)
従業員は作業前に手洗い・着替えを徹底している
(はい・いいえ)
交差汚染を防ぐためのゾーニングマップが掲示されている
(はい・いいえ)
【食材の保管・搬入ルール】
原材料は納入時の温度・賞味期限を記録している
(はい・いいえ)
冷蔵・冷凍保管庫は庫内温度を自動または手動で記録している
(はい・いいえ)
使用前後の食材は原材料と加工済を別エリアで保管している
(はい・いいえ)
上記の質問のうち、「いいえ」が3つ以上ある場合は、改善が必要なレベルといえます。
診断結果による改善提案:どこから手をつけるべきか?
では、実際に基準を満たしていない項目があった場合、
どのように改善すべきでしょうか?
優先度の高い改善項目
まずは「加熱・冷却・保管」に関わる設備と記録体制の見直しが優先です。
理由は、これらが直接「食中毒リスク」と直結するからです。
ブラストチラー(急速冷却機)の導入
温度計測センサーの導入(記録付)
配送車両の温度管理・記録表の整備
行政書士やコンサルとの連携
大量調理施設に該当する場合、保健所との事前相談が非常に重要です。
また、食品衛生責任者の講習だけではカバーできない法的手続きや
施設設計に関しては、行政書士や食品衛生専門のコンサルタント
との連携も有効です。
実際、厨房改装や新設に際して「食品衛生法+建築基準法+消防法」を
一括で調整してくれる専門家のサポートは、後からの差し戻しや追加工事を
防ぐ効果もあります。
まとめ
「許可」だけではない、信頼の“仕組み化”が今後の勝ち筋
今や、保健所の「営業許可」を得ただけでは、安全・信頼の証明にはなりません。
問われるのは、いかにリスクを予測し、それを制度として回避できるかという
「仕組みづくり」です。
大量調理施設の基準に対応することで、単にコンプライアンスを守るだけでなく、
顧客・取引先・自治体からの信頼性も向上します。
さらに、生産の効率化やデジタル化の導入への橋渡しにもなります。
今こそ、自社の衛生管理体制を点検し、「信頼される工場」への一歩を
踏み出してみませんか?