知らないと損する!検便の法的リスクと実務対策
2025年08月18日 09:22
飲食店や食品製造業のオーナーの皆さんは、検便についての知識や情報は
キチンとお持ちでしょうか?
「検便って、本当に毎月やらないといけないの?」
「検便は義務では無いと聞いてたけど、実際はどうなの?」
こうした声をよく耳にします。
しかし、万が一の食中毒事故が起きたとき、検便体制の有無が
「企業責任」として 問われるケースが少なくありません。
今回は、飲食業や食品製造業に携わるオーナーや現場の管理者の皆さまに向けて、
検便の法的な立ち位置と、リスクを回避するための実務対策をわかりやすくご紹介します。
検便にまつわる「法律」の正しい理解
まず最初に押さえておきたいのは、
検便自体は食品衛生法で「義務」とされているわけではないということです。
ただし、ノロウイルスやサルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌(O157)など、
ヒトを介した食中毒リスクが高い職場では、厚生労働省や自治体が
ガイドラインとして 定期的な検便を強く「推奨」しています。
特に、以下のような事業者は注意が必要です。
・飲食店(とくに生の魚や肉、生野菜メインのサラダなどを扱う店舗など)
・弁当製造業(生の肉や魚、加熱した惣菜、生野菜などを扱う工場など)
・食品工場(加熱後冷却→包装の工程があるラインなど)
・集団給食施設(学校・病院・高齢者施設など)
これらの施設では、HACCPに基づく衛生管理計画の一部として、
検便体制の構築が求められます。
都道府県で異なる“検便指導”の実態
実は、検便の実施頻度や対象者については、都道府県ごとに
保健所の指導方針が異なるのが実情です。
・大阪市(大阪市食品衛生法施行条例)の場合
保健所長の指示があれば「検便義務」あり。
症状ある従業員は食品作業に従事させず診断を義務づける。となっています。
・大阪府の場合
ノロウイルス汚染リスクが高い業種に対して、冬期に重点的な実施を指導
・東京都の場合
食品等事業者向けガイドラインで「月1回程度」の検便を推奨
・地方都市の場合
年数回で十分とするところもあれば、具体的な指導を行っていない自治体もある。
こういった違いが、「うちはやらなくてもいいと思っていた」という
誤解を招く原因ではないでしょうか。
したがって、自分の店や工場の管轄地の保健所に事前確認することが大事です。
なお、大量調理施設衛生管理基準を満たすためには、月1回以上
学校給食衛生管理基準を満たすためには、月2回以上などの
ガイドラインが示されています。
HACCPと検便(どこまで連動すべきなのか?)
2021年の食品衛生法改正により、すべての食品等事業者に
HACCPに沿った衛生管理の義務化が始まりました。
HACCPでは、「ヒト由来の汚染リスク即ち従業員の健康状態」を把握し、
管理することが前提です。
その中で、検便は次のような位置づけになります
CCP(重要管理点)ではなく、PRP(前提条件プログラム)としての活用
従業員の健康チェックの一環(胃腸症状の有無や感染症履歴とあわせて)
「感染源を早期発見し、他の従業員や製品への影響を防ぐ」のが目的です。
つまり、ヒトからヒト、ヒトからモノに感染リスクがあるため、
HACCPでも「検便しないことは、対策不十分」と見なされる可能性が高く、
導入は強く推奨されます。
検便も費用が発生することから、強くは言えないのかもしれません。
皆さんは、検便の「不顕性感染(ふけんせいかんせん)」という
言葉をご存じでしょうか?
人によっては、食中毒菌を保菌していたり、ウイルスに感染している
けれども、 本人に、全く自覚症状が無い状態を指します。
また、本人が知らないうちにこれらの病原菌を
を保有している人達のことを「健康保菌者」と呼びます。
こういった人たちを検便によって、早期に発見し、
調理業務につかせないことが重要です。
検査結果の保管・提出義務はどうなっている?
検便の実施後、その検査結果を保管する義務はあるのか?
法律上、明確な「提出義務」はありません。
ですが、食中毒や感染症が発生した際に保健所からの調査・報告が
求められることがあり、 そのときに検便結果が求められることは
少なくありません。
また、以下のようなガイドラインで「保管の努力義務」が記されています。
HACCP制度化に基づく衛生管理計画の記録として保管(1年程度が目安)
保健所の現地調査時においても、提出を求められることがあります。
したがって、最低でも1年間は、検査機関からの結果通知書や一覧記録を
ファイリングする。あるいは、電子データを保存しておくのが望ましいです。
トラブル防止に役立つ内部マニュアルの作り方
検便を形だけの形式で終わらせないために、社内マニュアルや
手順書の整備が有効です。
マニュアルに盛り込むべき要素は次の通りです。
・対象者の範囲(例:パート含む調理担当者全員 、全従業員 など)
・実施頻度とタイミング(例:毎月1回、繁忙期前、採用時など)
・委託する検査機関(費用により、検査する菌、ノロウイルスの
有無により業者を選定)
・検体回収の手順(今は、郵送不可の場合がある)
・検査結果の保存方法と期間
・陽性時の対応フロー(出勤停止・保健所連絡・再検査 など)
このように、具体的な運用ルールを明文化することで、万が一の際も
スムーズな対応が可能となります。
まとめ
検便は、単なる「形式的な作業」ではありません。
もし食中毒事故が発生したときは、真っ先に検便結果を求められます。
検便を実施していないと、企業の衛生管理体制そのものが疑われます。
「やっているつもり」で終わらせず、法的リスクを見据えた
「見える衛生管理」を実現していきましょう。
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