大阪の火災事例から学ぶ教訓
2025年10月02日 20:00
10月現在では、35℃を越える日は見なくなってきましたが、まだまだ暑い日が続いています。
この夏、神社に置いていた参拝者のために置いていたロウソクが、外気温で溶けている現象を目撃しました。
調べてみるとロウソク自体は、自然発火しないので少し安心しました。
そこで、飲食店や一般家庭でも自然発火について改めて考える機会を設けるために、今回少し記事にしました。
2020年以降の大阪府内の事例を見てみると、「油分」に関わる自然発火・火災の事例が教訓として挙げられます。
大阪市阿倍野区(2024年)の飲食店で発生した事件は、ニュースでも良く報道されていたので記憶されている人も
多いのではないでしょうか?この事件は、使用済み油・油かス(油分が残ったもの)を長時間放置していたことが原因と見られています。
1. 「天かす」や「油カス」からの自然発火事例
【事例の概要】
飲食店において、フライヤーから回収した大量の油カス(天かすや揚げ物の残りカス)を長時間放置していたところ、油カスから出火したという事例や、天かすを山積みにしていたところ出火した事例が報告されています。
(出典:大阪市消防局など)
【教訓:油分を含んだ固形物の蓄熱リスク】
天かすや油カスは、油を吸い込んでおり、酸化熱を発生しやすい非常に危険な物質です。
「熱」の閉じ込め:大量に山積みされると、中で発生した熱が逃げ場を失い、温度がどんどん上昇(蓄熱)します。
「時間」の経過:調理直後は熱が残っていますが、冷めたと思って放置した後に、酸化反応による自然発火が起こるケースがあります。
2. 「オイルの染みた布(ウエスタオル)」からの自然発火事例
【事例の概要】
飲食店や食品工場そのものではないものの、類似するリスクとして、亜麻仁油(アマニ油)などの特定の油が染み込んだウエス(調理場内の雑巾のようなもの)を丸めて放置したところ、酸化反応による熱が蓄積し、自然発火に至った事例が、注意喚起として挙げられています。
(出典:八尾市など)
【教訓:油の種類とウエスタオルの管理】
食用油の中でも、不飽和脂肪酸を多く含む油(アマニ油、えごま油、紅花油など)は、空気中の酸素と結合しやすく、
その際に熱を発生しやすい「乾性油」に分類されます。
リスク物質の認識:ご使用になっている油の種類(特に健康志向のオイルや、木製品・皮革の仕上げなどに使われるオイル)の特性を把握することが重要です。
処理の徹底:油が染み込んだ布は、決して丸めたり積み重ねたりせず、必ず水に浸すか、多量の水で十分に洗い、熱がこもらないように通気性の良い不燃性の容器に保管する必要があります。
3. 現場で取り組む「3つのアクション」
今できることとして、以下3つの大事なことをまとめておきました。
1. 【天かす・油カスの即時処分徹底】
フライヤーから回収した油カスや天かすは、熱が残っているうちに、できる限り広げて冷ます。
廃棄する際は、水に十分に浸すなどの処理を行い、フタ付きの金属製容器(不燃容器)に保管し、決して大量に山積みしないルールを徹底しましょう。
2. 【油ダクト清掃の「見える化」】
ダクト内の油汚れも火災の大きな原因です。清掃業者に依頼する際、清掃頻度と清掃範囲を明確にしたチェックリストを作成し、完了したら必ずサインしてもらう「見える化」を導入しませんか。
3. 【油拭き取り用タオルの管理ルールの確認】
油汚れを拭き取ったタオルやウエスは、洗濯に出す前、乾燥機に入れる前など、「油分が残った状態で熱がこもる瞬間」がないか、現場の導線(流れ)をチェックしましょう。
まずは、これらのポイントを現場で確認する「安全チェックシート」は、「HACCP書類」と合わせて作成しておく方が得策です。自分が経営する飲食店や食品工場にておいて、ぜひ作成してみて下さい。
もし作成が難しい場合は、食品関連業務に詳しい当行政書士事務所にご依頼いただければ、あなたのお店や工場に沿った「安全チェックシート」や「HACCP書類」の作成をお手伝いできます。