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万が一の時も慌てない!「食中毒かな?」と思ったら

2025年10月09日 11:19

こんにちは、行政書士の林です。

今回は、飲食店で「食中毒かな?」 と思ったときの行動について共有したいと思います。

ある意味、従業員教育の一環としても役に立つ内容となっていますので、ご活用下さい。

はじめに

「うちでは食中毒なんて起きないよ」という過信が、一番危ないと思います。

飲食業界で働く皆様であれば、衛生管理には人一倍気をつけていることでしょう。

HACCP導入や食品衛生責任者の配置、調理場のゾーニングなど、日々の積み重ねが安全・安心の提供につながります。


しかし、どれだけ気をつけていても「ゼロリスク」は存在しません。

特に、家庭内や小規模施設では、「ちょっとした油断」が深刻な食中毒へとつながることもあります。

そんな「万が一」のとき、正しい初動対応ができるかどうかで、被害の拡大や健康被害の程度は大きく変わります。

今回は、「あれ?これ、食中毒かも?」と思ったときに慌てないための知識を、飲食業界のプロにも役立つ視点でご紹介します。

食中毒の初期症状と種類

食中毒かな?と思った初期の症状で「原因菌」のヒントがつかめることも あります。

食中毒は、発症のしかたによって原因菌やウイルスをある程度絞り込むことができます。

以下は、厚生労働省の統計資料などに基づく、代表的な食中毒の症状と潜伏期間です。

原因:潜伏期間 、主な症状

ノロウイルス:1〜2日、嘔吐、下痢、発熱(軽度)

カンピロバクター:2〜5日、発熱、下痢、腹痛(血便の場合も)

サルモネラ属菌 :6〜72時間、下痢、腹痛、発熱

腸管出血性大腸菌(O157など):3〜8日、激しい腹痛、水様〜血便、発熱(軽度〜中等度)

黄色ブドウ球菌(毒素型):30分〜6時間、嘔吐、下痢(発熱は少ない)

ウェルシュ菌 :6〜18時間、水様便、腹部膨満感(軽度)

いずれも共通するのは、「突然の体調不良」・「胃腸系の症状」です。

特に、複数人が同じタイミングで同様の症状を訴える場合は、食中毒の可能性が極めて高いと考えられます。

自己判断の危険性

「市販薬で様子を見る」は最悪の判断になるかもしれません。

家庭ではつい「市販の下痢止めを飲ませて様子を見よう」と考えがちですが、これは非常に危険です。

例えば、ノロウイルスなどのウイルス、あるいは腸管出血性大腸菌(O157など)の細菌性食中毒の場合、

下痢や嘔吐は体内から有害な菌や毒素を排出するための生体防御反応です。

無理に体外への排出を止めることで、症状が悪化したり、合併症(特に腎不全など)につながることもあります。

医療機関の受診タイミング

・高熱(38.5℃以上)がある

・血便、激しい腹痛、嘔吐が続いている

・乳幼児や高齢者が発症している

・複数人が同時に発症している

こうしたケースでは、即座に医療機関を受診することが重要です。

また、症状が落ち着いても、症状の経過と原因究明のために診察を受けることをおすすめします。

食べたものの特定と情報共有

「何を、いつ、どれくらい」が医師の判断材料に医療機関に行く際、症状だけでなく「直前に食べたもの」も伝えることが重要です。

以下の情報は、医師や保健所にとって極めて重要な手がかりになります。

受診時に役立つ情報メモ

・食べた日および時間帯

・食べたものの内容(できれば写真も)

・食材の入手先(店舗、産地など)

・食事をした人の人数と、それぞれの症状の有無

・同じ食材を使った他の料理があるかどうかなど

飲食店の場合は、仕入れ帳簿や調理記録、従業員の体調管理表なども

確認・整理しておくと、後の調査に役立ちます。

これらの内容は、まさしくHACCP書類の一部になっています。

行政機関への相談

保健所はあなたの店舗を「責める場所」ではなく「守るためのパートナー」と考えましょう。

食中毒の疑いがある場合、保健所への連絡は義務ではなくとも「強く推奨」される行動です。

保健所は、感染経路の調査や他者への感染拡大を防止する役割を担っており、迅速に情報提供することで、二次感染を未然に防げることも多くあります。

相談先の例

市区町村の保健所 衛生課

なお、報告する際は「営業停止になってしまうのでは…」という不安もあるかもしれませんが、

誠実な報告をすることが、逆に信頼を保つための第一歩となります。

まとめ

最悪の事態を“最小限”にするために

どれだけ丁寧な衛生管理をしていても、人間の行うことにミスはつきもの。

だからこそ、発生後の対応が、プロの誠意と責任感を示す舞台になります。

・初期症状を正しく知る

・自己判断に頼らず医療機関へ

・情報を整理し、正確に伝える

・保健所に相談し、再発防止を図る

こうした一連の行動は、店舗や施設の信頼を守る「第二の衛生管理」とも言えるのです。

飲食業のプロとして、ご家庭でも職場でも「冷静な初動の準備」を進めておきましょう。


今回の記事は、細菌性食中毒を中心の内容について記事にしましたが、今後は自然毒や化学薬品の食中毒についても記事にしていく予定です。


なお、この記事は食品衛生法、感染症法、厚生労働省「食中毒予防の手引き」等に基づき、執筆しています。



本日の内容は、HACCP導入と密接に関連しています。もし、あなたの店舗に応じたHACCP導入が必要でしたら、

当行政書士事務所にご連絡ください。