異物混入と照度について
2025年10月29日 15:48
飲食店や食品工場のオーナーおよび食品関連の仕事に従事している人にとって、最も避けなければならないのは「食中毒の発生」です。
そのため、日々の衛生管理を徹底しなければなりません。
しかし、しっかりとした衛生管理を行っていても、依然として防ぎきれていないのが「異物混入の発生」です。
実は、この「異物混入」と密接に関わっているのが、「照度(明るさ)」の問題なのです。
今回は、異物混入と照明環境の関係について、関連法令や基準を整理しながら考えてみたいと思います。
① 照度と労働安全衛生法の関係
まず、働く人の安全を守るために定められているのが労働安全衛生法です。この法律では、従業員が50人以上いる事業所において、衛生管理者の選任や衛生委員会の設置(毎月1回の開催)が義務づけられています。さらに、職場の環境基準として「照度(明るさ)」の最低限度も定められています。なお、照度(ルクス)というのは、ざっくりと一定面積当たりの明るさだと考えてください。
令和4年(2022年)の改正により、基準は次のように引き上げられました。
一般的な事務作業:300ルクス以上
付随的な事務作業:150ルクス以上
また、照明設備については6ヶ月以内ごとに1回以上、定期点検を行うことも義務づけられています。
つまり、照度管理は単なる快適性の問題ではなく、法的に求められる「安全管理」の一部なのです。
② JIS規格における照度基準
一方、JIS規格(日本産業規格)では、より細やかな照度の目安が定められています。
JISは法律ではなく「推奨基準」ですが、実際の現場ではこの数値が設計や監査の参考にされています。
精密作業:500~1000ルクス
普通作業:300~750ルクス
粗作業:100~200ルクス
このように、JIS基準は労働安全衛生法よりも高い数値を推奨しています。
目的は、作業効率の向上・ミスの防止・健康被害や事故の予防です。
照度不足は、作業者の疲労や判断ミス、ひいては異物の見落としにもつながります。
③ 食品衛生法における「十分な照度」
次に、食品を取り扱う施設に直接関係するのが食品衛生法です。この法律では、照度の目安について「自然光または人工光により十分な照度が得られること」と規定されています。
具体的な照度の数値は示されていませんが、要するに「衛生的な作業ができる明るさを確保せよ」という趣旨です。
ここで重要なのは、労働安全衛生法が数値で環境を守るのに対し、食品衛生法は衛生管理の観点から照度を求めているという点です。
つまり、両者は異なる目的を持ちながら、結果的に「食品の安全」と「労働者の安全」を両立させる役割を果たしています。
④ 異物混入防止と照度の関係
食品製造や調理の現場では、十分な照度を確保することで、次のような効果が期待できます。
・小さな異物や汚れを見逃さない
・食材や容器の汚染を早期に発見できる
・従業員の安全確保と作業効率の向上
特に異物混入防止の観点では、照明環境の改善が最も効果的な対策の一つです。
EUの食品衛生規則でも、食品施設には100ルクス以上の照度を確保することが適切とされています。
日本でも、飲食店営業許可の施設基準には以下のような数値目安があります。
・客室:10ルクス超
・調理・製造施設:50ルクス以上
作業工程に応じて必要な明るさを確保することが、異物混入リスクを減らす第一歩です。
⑤2027年「照明の問題」への備え
近年、2027年に一部の照明器具が製造終了となる「照明の2027年問題」が話題となっています。前回の私のブログ記事でも取り上げています。
「ランプが買えなくなるから」という消極的な理由で対応するのではなく、
「この機会に作業環境の安全性と衛生レベルを高める」ことを目的に見直すことが重要です。
LED照明への更新は、エネルギー効率の改善だけでなく、色温度の調整による異物検知性の向上など、食品工場や飲食店にとって多くのメリットをもたらします。
ぜひ、会社の衛生委員会等で早めに議論して、合理的な導入を検討した上で、計画的に推し進めていかれることを推奨します。
まとめ
照度は単なる「明るさ」ではなく、食品の安全性・従業員の健康・作業効率・クレーム防止すべてに関わる要素です。
労働安全衛生法、JIS規格、食品衛生法それぞれの基準を理解し、現場の照明環境を定期的に点検・改善していくことが、「異物混入ゼロ」への最短ルートといえるでしょう。
個人的な意見
照度に関する各法律や基準にそれぞれ違いを持たせているのは、あえて飲食店オーナーの意向や行政裁量やが入り込む余地を残しているような気がしています。
普通に考えれば労働者にとって、照度が高ければ異物混入は防止しやすくなると思われがちです。一方で、部屋全体が明るすぎると、目がチカチカするフリッカーの問題や眼精疲労の要因にもなってくるでしょう。
その他、飲食店で厨房内の部屋全体の明るさを上げるよりは、調理作業をする手元を十分に明るくするような工夫で、効率的に異物混入の発生を低減できると思います。
また、お酒や食事を楽しむのに部屋全体の明るさだけを追求するのであれば、飲食店の雰囲気が台無しになってしまうことも考えられます。
実務的には、飲食店の場合、調理場スタッフだけでなく、ホールスタッフとの連携(異物混入のダブルチェックによる防止)がより大切なのではないでしょうか。
最後に、一律として飲食店に食品工場レベルの措置を求めるのは無理があると思います。
あえて法律や基準に違いを持たせているのは、食品を提供する人数とそれに比例した異物混入の発生率を考慮した結果なのかもしれません。
これらを総合して考えてみると、飲食店は基準を満たした上で異物混入防止の対策さえ整えていれば、法律違反にはならないと言えるのではないでしょうか。