野生動物の駆除と食の倫理:「命を活かす」ための責任ある循環
2025年11月13日 17:34
野生動物の「駆除」から、命への敬意を払う「ジビエ」へ
最近では、「駆除した野生動物をジビエとして有効活用する」という動きが全国で広がりを見せています。
長野県など、先進的な地域では、専門の食肉処理施設での厳格な検査を経た上で、地域ブランド(信州ジビエなど)として商品化する事例も増加しています。
これは、単なる「もったいない」という発想を超え、命を無駄にせず、感謝をもっていただくという、日本の食文化の根源にある倫理観に立ち返る行為です。
「活かす」ために不可欠な三つの責任
野生動物の肉を安全な「食料」として社会に提供するには、家畜とは比較にならないほどの厳格なルールと管理が求められます。
この「命を活かす」循環を成立させるためには、以下の三つの責任を果たすことが最低限の前提となります。
1. 法的な許認可を得る責任
有害鳥獣駆除や狩猟で得た肉を飲食用に供する場合、事業者はその行為に応じた営業許可を取得しなければなりません。
・食肉処理業(解体・加工を行う場合)
・食肉販売業(肉を販売する場合)
・飲食店営業(調理して提供する場合)
2. 徹底した衛生管理の責任
野生動物の肉は、寄生虫(イノシシ肉のE型肝炎ウイルス、クマ肉のトリヒナなど)や細菌による食中毒のリスクが高いとされています。
「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(厚生労働省)」に基づき、捕獲後の迅速な内臓摘出や適切な温度管理が必須です。
提供する際は、食中毒予防のため中心温度75℃・1分以上の加熱を徹底しなければなりません。
3. トレーサビリティ(追跡可能性)の確保
野生鳥獣の肉や脂を販売・提供する際には、捕獲場所、処理施設、衛生検査の履歴を明確にする必要があります。これにより、万が一健康被害が発生した場合でも、迅速かつ的確な対応が可能となります。公的な駆除活動で得た動物を営利利用する際は、自治体の許可や契約内容の確認も不可欠です。
行政書士としての役割と共生の未来
駆除と食の関係は、単なる「資源の活用」ではなく、「社会全体での責任ある仕組みづくり」へと昇華させるべき課題だと思います。
命をいただくという行為は、感謝だけでなく、リスクと向き合う覚悟を伴います。行政、事業者、そして消費者がそれぞれの立場で役割と責任を果たしてこそ、真の意味で「命を活かす」安全な循環が生まれます。
私たち行政書士の役割は、これらの法的手続きや衛生管理の理解を行政と事業者間で橋渡しし、円滑な実施を支えることにあります。法令や制度を遵守することはもちろん、地域の中で「命の扱い方」についても共に深く考えていきたいと考えています。
野生動物との共生、そして命の循環。一つひとつの命に敬意を払いながら、食の安全と倫理を両立させる仕組みを、次の世代へ責任をもって引き継いでいくことこそが、今私たちに求められている「食の知恵」ではないでしょうか。
なお、食肉処理業(解体・加工を行う場合)、食肉販売業(肉を販売する場合)、飲食店営業(調理して提供する場合)の許認可申請を取得だけでなく、衛生管理や商品表示についてもサポートできる当行政書士事務所にお気軽にご連絡してください。