店頭でテラス営業をしたい方へ ~「道路使用許可」と「道路占用許可」の違いと申請の流れ~
2025年07月17日 13:05
こんにちは、行政書士の林です。
とうとう大阪でも蝉の声が聞こえ出し、本格的な夏を迎えるようになってきました。
日中に、少し買い物に行くだけでも暑くて汗だくになり、水分と塩分の補給より先に、
ビールを補給したいなという気分になってきますよね。
夏本番を迎えるようになると、飲食店オーナーの皆さんも、店頭でのテラス営業を
スタートさせたいなと思っている方が多くなってきているのではないでしょうか?
ただし、これらの営業形態には通常の店舗営業とは異なる注意点が多く、
警察署・保健所・市区町村の許可や届出が必要になってくる場合があります。
そこで、今回は、居酒屋を夏に開業しようと考えている方向けに、
「お店の前にテーブルやイスを出して、外でちょっとしたテラス営業をしたい!」
という場合に必要な手続きについて、わかりやすくお伝えします。
「自分の店の前」でも手続きが必要なの?(大阪市内の飲食店)
普段は、店内営業されている方でも、店頭で営業しさえすれば、
もっと売り上げが上がるだろうと思いますよね。
そして、「自分の店の敷地内やから、好きにさせてもらいますね?」と
思われがちですが、少し待ってください。
パラソルやテーブルなどを歩道上や公道に設置する場合には、原則として
許可が必要になってくるんです。
その際、まずは、店前にあるスペースが「私有地」か「公道・歩道」かを
よく確認してください。
特に大阪市では、建物前の通路が市道や歩道になっているケースが多く、
道路法や道路交通法の規制を受けることになります。
2つの許可の違い:「道路使用許可」と「道路占用許可」
道路法や道路交通法の規制を受ける場合に、基本的には
道路使用許可や道路占用許可を取得しておく必要があります。
そして、これらの用語は似ていますが、目的と管轄が異なりますので注意してください。
・道路使用許可:通行の妨げになる行為を一時的に行う許可(交通の観点)から、
管轄は警察署(交通課)になります。
・道路占用許可:道路上に物を継続的に設置する許可(道路の管理の観点)、
管轄は市区町村の道路管理者になります。
例えば、「夏の間だけ営業したいんやけど」、
「それも18時~21時の間だけ、店の前で営業したいんやけど」
というケースでは、「道路使用許可」が主に該当すると思われます。
ただし、設置物を固定したり、期間が長くなったりすると、
規制が厳格になり「道路占用許可」も必要になる場合も出てきます。
警察署への「道路使用許可」の申請の流れ
1. 申請先: 店舗所在地を管轄する警察署「交通課」
2. 提出書類:
・道路使用許可申請書(様式あり)
・営業内容の説明書(営業目的・営業時間など)
・位置図、平面図(通行スペースを確保していることを示す必要あり)
・その他、使用責任者の身分証明等が必要
3. 提出期限: 使用開始予定の概ね7日前までに提出
4. 審査内容: 通行人の妨げにならないか、安全確保の措置があるか
そして、手数料としてかかる費用は、
一般的には 2,000円~2,500円前後(都道府県ごとに異なります)
複数日にわたる使用や複雑なレイアウトの場合、追加費用が
発生することも あります。
注意点と行政書士のアドバイス
大体のお店は、お酒の提供をすると思われますが、未成年者対策もしっかり取って下さい。
夏休みは、大人と見間違う若者が今まで以上に出歩いている可能性があります。
男性、女性を問わず、年齢確認するようにしましょう。
また、近隣住民への配慮も十分に取って下さい。
特に、ゴミ処理の問題や騒音への配慮が重要です。
近隣住民や他店舗にも了承を得ていないとトラブルに発展する恐れが
あるため注意して計画するようにしましょう。念のため。
また、通行スペースは1.5m以上確保するように指導されることが多いようです。
その他、固定設備(設置型の柵や屋根)を設ける場合は「道路占用許可」も必要になるので、
市役所の建設部門などに事前確認をして下さい。
まとめ
「夏の間だけ、店頭でちょっとしたテラス席を作りたい」と思っても、
公道であればきちんと警察署の許可が必要です。
軽視して無許可で営業してしまうと、道路交通法違反(無許可占拠)で
罰則を受ける可能性もあります。
手続きが面倒だ、書類作成やレイアウト図の準備などが不安な方は、
行政書士にご相談いただければ、スムーズに対応できます。
私事ですが、実家の神社では、例年7月24日と25日は夏祭りの行事が
執り行われる予定になっています。
お祭りに参加する大人や子供、関係者達が一緒になって、
お神輿、太鼓、獅子舞が町内会を巡行しますが、その際にも各町会において
道路使用許可を取得する必要があり、警察署まで足を運びます。
地域によっては、我々よりも厳しい規制を受けることがあるそうです。
ですから、飲食店オーナーも「私の店は、数日しか営業しないから大丈夫」と
勝手に考えずに、必ず事前に管轄の警察署に事前相談するようにしましょう。
追記:警察が確認しにくる場合があるかもしれません。
以前、神社境内の一部に駐車スペースを設けて、車庫証明の申請を
出したことがありました。神社のすぐ前が交番になっているので、
まさか車庫証明の内容を確認しにくるとは思いませんでした。
しかし、実際に、抜き打ちで、保管場所の確認、申請車両の確認、
申請車庫の大きさ(実地で測られました)、申請書類に記載の誤りがないか等の
確認に警察署の職員の方が現地調査に来られたことがありました。
確認作業は、約10分ほどで済みました。
その後で、少しお話をさせていただいたところ、
・申請場所が道路とみなされる場合に該当するかどうか。
・集合駐車場になっている場合は、申請車両の保管場所が特定できたか
どうかが重要ですとおっしゃっていました。
これ、今回お話しした内容とどこか似ているような状況だと思いませんか。