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再確認、食品関連の主な法改正による制度変更について(2020〜2025年)

2025年07月23日 07:38

今回は、食品関連分野での主な法改正によって、制度が変更された(2020年〜2025年)中から

いくつかピックアップして解説してみました。

特に「開業する際や・運営の現場にどう関係するのか?」という視点でまとめてみました。

知っているとは思いますが、この機会に再確認してみましょう。

1.「HACCPの制度化」スタート

食品衛生法改正の流れの中でまず、最も大きな制度変更といえば、

HACCP(ハサップ)の制度化です。

2021年6月から、原則すべての飲食店に対して「HACCPに沿った衛生管理」が義務づけられました。

HACCPってなに?

HACCPの言葉の意味や要約については、ホームページの業務コラムにも記事があります。

是非、参考にしていただけたら幸いです。

HACCPについての業務コラムの内容をさらに簡略化すると、

自分たちのお店や工場の衛生管理について、

「食中毒など人に危害を及ぼす要因を洗い出し、どういった箇所にリスクが

あるか事前に良く考えて、しっかりと管理していこう」

という仕組みがHACCPであるといえます。

簡単な例を示すと

・冷蔵庫の温度を毎日記録する(冷蔵庫の庫内温度は適正か、異常はないかなど)

・調理器具の洗浄・消毒のルールを決める(器具を洗ったら、乾燥させてしまう)

・食材の納品記録を残す(冷凍品の場合は、キチンと冷凍状態で納品されていたか)

といったような重要な衛生管理のポイントについて「見える化」が求められるようになりました。

要するに、お客様に食品を提供するすべての飲食店や食品工場は、

衛生管理の手法としてHACCPを導入しなさい。そして、食中毒防止に向けて、

適切に運用しなさい。ということなのです。

そして、このHACCPを導入することが「お客様に食品を提供するすべての事業主

(既存の事業主も、これから開業する事業主)にとって必須となりました。

場合によっては、飲食店営業許可を取る際に、「衛生管理計画」や「管理記録表」の

提出を求められる自治体もあります。

開業直前になってバタバタしないよう、あらかじめテンプレートを用意しておくのがおすすめです。

2.「食品衛生責任者」設置範囲の拡大

2021年6月から原則として、営業許可や営業届出の対象となる全ての施設

必ず「食品衛生責任者」の設置が必要となりました。

なお、食品衛生責任者とは、営業者の指示に従い、「HACCPに沿った衛生管理」など

施設における衛生管理にあたる人のことです。大阪市で受講する場合、費用は10,500円です。

もしも施設内で食品衛生責任者の資格者がいない場合には、どなたかに

講習を受けていただく必要があります。

(ちなみに、調理師免許や栄養士免許などを持っている人は、所定の手続きを取り、

申請することで大丈夫です。)

なお、営業許可業種の食品衛生責任者については、フォローアップのための講習会

(実務講習会)を定期的に受講し、新たな知見の習得に努めることになりました。

開業前の注意点

今後は、食品衛生責任者になるには事前にオンライン学習を済ませるなど、

少し時間がかかるようになります。

「お店の物件を契約したけれど、講習の予約が取れない!」ということもあるので、

余裕をもって早めに申し込んでおく必要があります。

また、アルバイトに食品衛生責任者を取得させたが、開業直前にやめてしまったという

事態にならないよう、飲食店オーナー自らが取得しておくことをおススメします。

3.新たに追加された食品営業許可業種

食品衛生法の改正により、食品営業許可制度が一部変更となりました。

今まで許可不要であった水産製品製造業、液卵製造業、漬物製造業については、

新たに営業許可が必要となりました。

2021年から3年間の猶予措置が取られていましたが、2024年6月1日から

完全施行になったのです。

この他にも、食品の小分け業、密閉包装食品製造業新たに営業許可が必要となりました。

結果として、営業許可業種が全体で32業種に再編され、営業届出制度が新たに創設されました。 ​

この法改正により、設備の新設やHACCP導入の義務化に伴って、小規模店舗が

廃業を迫られるケースが各地で相次ぎました。

その当時、NHK関西のニュースでも取り上げられていましたが、

大阪鶴橋商店街のキムチ店が取り上げられているのを見た人も多いのではないでしょうか。

この法改正の背景には、2012年に白菜の浅漬け製品による病原性大腸菌による

集団食中毒事故が発生し、8人が死亡する事件がきっかになったともいわれています。

4.食品リコールの届出制度の義務化

2021年6月から原則として、食品事業者等が自社製品の自主回収(食品リコール)

した場合は、行政機関への届出が義務化されました。

自社製品が食品衛生法や食品表示法に基づいて、違反が確認された場合または

違反のおそれがある場合には、自主回収すると共に、行政機関への届出が必須となりました。

最近では、大阪市内での食品リコール事例として、小林製薬の紅麹サプリ製品の回収が有名

ですよね。大きな企業だけでなく、中小企業でも関係してきますので注意が必要です。

5.食品表示ルールの改正

続いては「食品表示」に関する変更点についてです。

食品工場の加工食品だけでなく、飲食店の提供メニューや店頭で販売する

お弁当・惣菜・テイクアウト食品などにも影響があります。

変更ポイントの例

・原材料名の表示順は「重量順」に統一(例:米>鶏肉>たれ等)

・アレルゲン表示の強化(特定原材料+推奨表示20品目)

・栄養成分表示の義務化(一定規模以上の事業者について)等

小規模の飲食店でも関係してきますので、注意して下さい。

たとえば、あなたのお店で「おにぎりセット」や「自家製弁当」を店頭で販売するなら、

そのパッケージには適切な表示が必要になります。

「販売はイートインだけ」というお店でも、最近はテイクアウト需要が増えているので、

今後の展開次第では無視できないポイントです。

そして、ここ数年、特に強化されているのがアレルゲン(アレルギー物質)の表示です。

飲食店の提供メニューでも注意が必要になってきました。

特に、アレルゲン表示については、店頭のショーケース、店内のポップ、

テーブル上のおススメ、チラシ、パンフレット、試供品等店内を再度チェックして

みて下さい。

・「特定原材料8品目」

表示義務のあるアレルゲンのことです。以下の8品目です。

卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生、くるみ

なお、「くるみ」は、2023年に追加され、2025年4月1日から完全施行された。

ちなみに、特定原材料8品目の語呂合わせ考えてみました。

それぞれの頭文字の「ひらがな」を組み合わせてみると覚えやすいです。

そばの「そ」、卵の「ら」、乳の「に」、小麦の「こ」、えび「え」、

くるみの「くる」、かにの「か」、落花生の「ら」、で

「そらにこえくるから」少し強引ですが、これでいっきに覚えることが可能です。

・「推奨表示20品目」

これらは表示義務ではないものの、表示していると安心感を与える効果があります。

アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、

牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マカダミアナッツ、

もも、やまいも、りんご、ゼラチン

飲食店で提供される料理は、その場で調理されるため、突然の原材料の変更や

コンタミネーションのリスクがあり、表示が難しいケースがあるため、義務化はされていません。

法律上は義務ではありませんが、以下のような自主的な努力は求められます。

・アレルゲン一覧表等をテーブルなどに設置する。

・店内メニューに、例えば「この料理には卵を使用しています。」などと記載する。

・店内メニューに、例えば、従業員に「アレルギーの有無を確認して下さい。」などと記載する。

なお、語呂合わせについては、試作中です。できあがったら、またお知らせします。

まとめ

飲食店や食品工場を運営するうえで、法律の改正や制度の変更は「避けて通れない道」です。

実際の法令の条文や条例を、「読むこと」と「理解して現場に活かすこと」とはまったく別物です。

だからこそ、次の3つを意識してみてください。

1. 制度変更は「自分のお店や工場の現場において」、どう関係するかを考える

2. 行政書士や他の専門家の相談会やセミナーを活用する

3. 地域の保健所との「事前相談」を必ず行う

今後は、今回の記事の内容を個別に深堀してお伝えしていく予定です。