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自家製食品のネット販売におけるトラブル事例とその予防法

2025年08月03日 09:17

こんにちは。行政書士の林です。

最近、自宅で作った焼き菓子やジャムなどをネットで販売する

という記事や動画を見る機会が増えました。

個人でも手軽に食品を販売できる時代になった一方で、

「思わぬトラブルに巻き込まれてしまった」

「そんな大事なこと全く知らなかった」

という事態になる前に、思いつく限り予防策を立てておきましょう。

今回は、ネット販売で実際に起こりやすいトラブル事例をピックアップし、

その予防策について、食品工場の現場を良く知る行政書士の立場から

わかりやすく解説いたします。

1.トラブル事例A「賞味期限切れ、劣化によるクレーム」


【事例内容】

自宅で製造したクッキーを発送したところ、お客様から

「賞味期限を過ぎていた」

「湿気っていて不良品ではないか」

などのクレームが届いた。

製造した日から日数が経過していたのかもしれないし、

原因がわからない。


【原因と問題点】

①賞味期限の設定が曖昧だった。

②発送前の在庫管理ができていなかった。

③商品のパッケージに賞味期限が表示されていなかったため、

証明できなかった。


【予防策】

①についての対策

製造日と賞味期限は必ず表示し、記録として残しておきましょう。

・スマホやデジカメでパッケージの画像や賞味期限を撮影して保存するなり、

実際に記載された表示シールを手元に1枚残しておきましょう。

手作り製品でも、例えば、「〇日以内にお召し上がりください」と

明記することは最低限必要です。

・賞味期限〇日の設定については、第三者を含めた

官能検査を実施するなどのルールを決めておきましょう。

ちなみに、官能検査というのは、

通常の方法で代表的な製品を作った場合、

どれか一つを抜き取り、五感(目で見て、鼻で嗅いでみて、

口で味わってみてなど)を頼りに味や品質に異常がないか、

複数人でチェックして記録を残しておくことです。

各製造者で独自ルールを持つのが基本です。

製品によっては、あらかじめ微生物検査のデータを

残しておくことも必要になります。


②についての対策

出荷前に在庫管理表で期限を再確認する。

日付けの古い在庫から優先的に販売するなど

「先入れ先出し」の考え方を取り入れる。

・日付けやロットごとの記録も必ず残しておくようにしましょう。


③についての対策

・賞味期限が記載されたシールについては、前日、当日、翌日と

ロット番号が連続しておくように管理しておきましょう。

・開封前だったら何日までOK、何日だったらNGと

官能検査の結果を残しておく。

未加熱品の場合は、微生物検査の結果を残しておいた方が良いかもしれません。

保存条件(直射日光、高温多湿を避ける等)もラベルに記載すると

トラブル防止につながります。

2.トラブル事例B「食品表示に不備があり、行政から指導」


【事例内容】

例えば、ネットで販売していた自家製ピクルスが、行政機関の抜き打ち検査で

「名称」、「原材料名」、「内容量」、「保存方法」などの表示が不十分であると

指摘され、是正を求められた。


【原因と問題点】

①食品表示に関する主な関連法規を知らずに自己流でラベルを作成していた。

②実際の原材料と異なる記載や本来記載すべき内容を省略してしまっていた。

③義務表示のアレルゲンの表示漏れがあった。


【予防策】

①についての対策

・食品表示法と関係法令に基づいたラベル表示が必要です。

法令を確認し見直しましょう。

ちなみに、食品表示法は、食品衛生法、JAS法(旧、農林物質の規格化及び

品質表示の適正化に関する法律)、健康増進法の3つの法律の食品表示に

関する規定を統合した法律です。2015年4月1日に施行されました。

・納品された原材料の産地や使用されている添加物の情報については、

必ず記録を残しておきましょう。

・表示すべき項目は、主に次の7項目です。

再確認しておきましょう。

名称、原材料名、内容量、保存方法、賞味期限、製造者氏名と住所、

アレルゲン(特定原材料)


②についての対策

納品された原材料の産地や使用されている添加物の情報については、

必ず記録を残しておきましょう。

・不明な場合は、納品先に必ず問い合わせて確認しておきましょう。

・製造するレシピが同じでも、ロットが違えば原材料が違ってくる場合があります。


③についての対策

特に表示義務のあるアレルゲン表示

(卵、乳、小麦、そば、えび、かに、落花生、くるみ)については、

食物アレルギーのある方の命に関わる問題になるため、

厳密に管理しましょう。

表示ラベルは、できる限りダブルチェックして表示漏れを防いでください。

不安な場合は、食品表示診断士など専門家に一度チェック

してもらうのがおすすめです。

3.トラブル事例C「ネット販売でも許可が必要なんて知らなかった」


【事例内容】

既製品のジャムやピクルスを販売していたが、販売数量が増えたため

自宅で取れたイチゴやキュウリを友人に手伝ってもらって加工販売していた。

「製造業」と見なされ、保健所から営業許可を取得するよう指導された。


【原因と問題点】

①自分の趣味の延長から個人事業へと拡大する中で、

法的な問題を理解していなかった。

既製品ジャムの販売と加工品ジャムの販売の違いを

理解していなかった。

②製造場所が食品衛生法上の施設管理基準を

満たしていない自宅の台所であった。


【予防策】

①についての対策

まず食品衛生責任者の資格が必要です。

次に製菓材料等製造業許可、漬物製造業などの

営業許可を取得する必要があります。

・その他、パウチや瓶詰めで販売する場合は、

密封包装食品製造業許可を取得する必要があります。


②についての対策

・自宅での製造には施設の構造的な制限があるため、

保健所に事前相談しておくことを強くおすすめします。

・食品事業者として義務化されたHACCPの内容を理解し、

導入できているかを見直すべきです。

・食品衛生法上の管理基準を満たさない場合には、

自宅を改装する必要があります。

もし改装できなければ、シェアキッチン等で対応することで

可能な場合もあります。

まとめ

ネット販売においては、思わぬトラブルが起こる可能性がある一方で、

あらかじめ準備をしておくことでトラブルを防げることも多いのが実情です。

この記事で取り上げたポイントを押さえて、トラブルの少ない運営を目指しましょう。

行政書士は、以下のようなサポートを通じて、トラブルを防ぐお手伝いが可能です。

・必要な営業許可の有無の確認と取得手続きの代行

・食品表示ラベルの作成支援(法的に必要な項目を含めたチェック)

・ネットショップ開設時の特定商取引法の表示内容の確認

・保健所との事前相談の同行・代行

小さな規模でも、「安心して続けられる販売の仕組み」を作ることが、信頼と売上の両方につながります。

困ったときには、どうぞ行政書士にご相談くださいね。

なお、この記事は、行政手続き・表示法の一般的な内容を紹介したものです。

実際の販売にあたっては、お住まいの自治体の保健所に確認してください。