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飲食店や食品工場のオーナーこそ景品表示法を味方につけよう

2025年08月05日 05:42

はじめに

飲食店や食品工場のオーナーである皆さん、日々の業務お疲れ様です。

行政書士の林です。

今回は、景品表示法についての情報提供です。

景品表示法は、本来お客様を不当な表示や過大な景品から守るための法律です。

一方で、同時に皆さんのビジネスを守り、成長させるための強力なツールでもあります。

正しく理解し、味方につけることで、お客様からの信頼を勝ち取り、

売上アップにつなげましょう。

景表法って何?

景品表示法、よく景表法(ケイヒョウホウ)と略して呼ばれることがあります。

景品表示法とは、「不当な顧客誘引を防止し、一般消費者の自主的かつ

合理的な選択を確保すること」を目的とした法律です。

簡単に言えば、消費者が誤解したり、過度に期待したりするような表示や

景品提供を禁止することで、消費者を守り、公正な競争環境を保つための法律です。

景表法は、大きく分けて二つの柱で構成されています。

それが「表示規制」「景品規制」です。


表示規制とは?

表示規制とは、商品やサービスの品質、内容、価格などに関する表示を規制するものです。

例えば、皆さんの店舗のメニュー、店頭のPOP、ウェブサイト、SNS投稿など、

お客様が目にするすべての情報が対象になります。

具体的には、以下のような表示が規制の対象となります。

優良誤認表示(第5条第1号):

商品やサービスが実際よりも著しく優良であると誤解させる表示です。

・「A5ランク和牛使用」と謳っているのに実際は異なるランクの肉を使っている、

例えば、他府県産の肉を神戸牛だとか松坂牛とブランド牛をかたっている表示の手口です。

・「〇〇産」と表示しているのに別の産地のものだったりするケースが該当します。

例えば、外国産の赤貝が国内産と表示されているような表示の手口です。

有利誤認表示(第5条第2号):

価格や取引条件が実際よりも著しく有利であると誤解させる表示です。

・「本日限り半額!」と表示しているのに、実際は常に半額で販売しているような

ケースがこれに当たります。

その他、閉店店じまいセールと書かれているのに、いつまでも閉店してなくて、

安いと思わせる表示の手口です。

・二重価格表示(定価を高く見せて割引率を大きく見せる)なども注意が必要です。

最初から安くないのに安いと思わせる表示の手口です。

重要なのは、お客様が「メチャメチャお得だな」と期待する一般的な認識と、

実際の表示内容にズレがないか、ということです。

要するに、お客様に錯覚をおこさせる表示はしてはいけませんよということです。

根拠のない「最高級」「究極」といった表現も、場合によっては

優良誤認表示に該当する可能性があります。


景品規制とは?

景品規制とは、商品やサービスの購入者に対して提供される景品類

(おまけやプレゼント、懸賞など)の最高額や総額を制限するものです。

お客様を誘引するために過度な景品を提供することを防ぎ、

不公正な競争を排除することが目的です。

景品には大きく分けて「懸賞」「総付景品(そうづけけいひん)」

2種類があります。

懸賞:くじ引きやじゃんけん、特定の行為(アンケート回答など)によって景品を提供

例えば、キャンペーンに応募して抽選で豪華賞品が当たる、

といった企画がこれに当たります。

総付景品(そうづけけいひん):商品やサービスの購入者全員に提供される景品

例えば、来店者全員に粗品をプレゼント、一定額以上購入で割引券進呈、

といった企画がこれに該当します。

どちらの景品も、お客様の購買意欲を過度に刺激し、

不当な顧客誘引とならないよう、金額の上限が定められています。


よくある違反事例

では、実際にどのようなケースが景品表示法違反に問われやすいのでしょうか?

ここでは、飲食・食品業界で特に見かけることの多い具体的な

違反事例をいくつかご紹介します。

「当店人気No.1!」に根拠はある?

「地域で一番美味しいラーメン!」「売り上げNo.1のケーキ!」

このような表現は、よく見かけますよね。

しかし、その「No.1」や「一番」に客観的な根拠はありますか?

例えば、「売上No.1」と表示するなら、実際の販売データに

基づいている必要があります。

さらに、その「No.1」が「自店の中で」なのか、「地域全体で」なのかも

明確にしなければなりません。

アンケート結果や顧客満足度調査に基づく場合も、

その調査方法や対象を明示する必要があります。

あいまいな根拠や、全く根拠がないにも関わらず「No.1」と謳ってしまうと、

優良誤認表示として景表法違反に問われる可能性があります。

個人的には、大阪で三番目に美味しいラーメン店とか、当

店のトンカツは地元地域最大級の美味しさとかは、

上手い表現やなと納得させられてしまいますけどね。


「〇〇産」と表示しているのに実は違う?

「長野県産そば粉使用」、「鹿児島県産黒豚」、「豊洲直送鮮魚」など

食材の産地やブランドを明確に表示することは、

お客様の信頼を得る上で非常に有効な手段です。

しかし、これが事実と異なる場合では、優良誤認表示の典型的な

違反事例となる可能性があります。

特に食品業界では、原材料の仕入れ先や生産地が多岐にわたるため、

表示と実態が一致しないケースが多いです。

仕入れルートの変更があったにも関わらず表示を更新し忘れる、

一部しか該当しないのに全体に表示してしまう、

といった「うっかりミス」も、違反と見なされる可能性があります。

お客様は、表示された情報を信じて商品を選びます。

偽りの表示は、お客様の信頼を裏切る行為であり、

ブランドイメージを著しく損なうだけでなく、法的措置の対象となり得ます。

過大な景品表示になっていないか?

「今なら来店者全員に、豪華〇〇をプレゼント!」

「〇〇円以上の購入で、総額1万円相当の福袋が当たる!」

魅力的なキャンペーンは、集客に欠かせません。

しかし、提供する景品の金額が、景品規制の上限を超えていないか確認が必要です。

本記事でも少し触れていますが、

例えば、購入金額に応じて提供できる総付景品の上限は、

意外と低い金額に設定されています。

また、懸賞の場合も、提供できる景品の上限額だけでなく、

懸賞の総額にも制限があります。

お客様を強く誘引したいという気持ちは分かりますが、

法律で定められた上限を超えた景品提供は、

景品規制違反となります。景品の金額だけでなく、その表示方法も重要です。

例えば、「通常価格1万円の品が無料!」と表示しても、

それが実際には1万円の価値がない粗悪品であれば、

有利誤認表示に該当する可能性があります。


違反するとどうなる?

社会的信用の失墜、行政処分、課徴金制度、刑事罰 、損害賠償請求 などを

負うことが考えられます。

これらのリスクを考えれば、景品表示法を遵守することの重要性が理解できるはずです。

まとめ

ここまで景品表示法の基本からリスクまでを解説してきましたが、

・表示内容に、根拠があるか常に確認する。

・景品の上限額を把握し、過度な提供は控える。

・表示内容に少しでも疑問に感じたら、専門家や消費者庁の情報を確認する。

これらの意識を持つだけで、景品表示法違反のリスクを大幅に減らせます。

景品表示法を味方につけ、お客様に「安全」と「安心」を届けることで、

飲食・食品業界をますます活発にしていきましょう。