家庭で実践する飲食のプロが行う「食材管理術」
2025年08月13日 08:40
こんにちは、行政書士の林です。
「食材の鮮度や保存なんて、プロの料理人が気にすること」と思っていませんか?
ここで改めて「家庭の食卓」の安全について考えてみましょう。
今回は、プロの厨房で実践されている食材の「鮮度」と「保存」の管理術を、
家庭でも使えるように解説していきます。
厚生労働省が推進する「HACCP(ハサップ)に基づく衛生管理」は
プロの現場では義務ですが、その考え方は、家庭にも十分応用可能です。
購入時のチェックポイント
最も重要なのが、そもそも安全な食材を選ぶことです。
どれだけ冷蔵や加熱を徹底しても、スタート地点が不衛生では意味がありません。
食品の「表示ラベル」と「見た目」で差が出る、安全な買い物術
表示ラベルの見方
・「消費期限」は、安全に食べられる期限(主に弁当や生鮮食品など)。
必ず守りましょう。
・「賞味期限」は、おいしく食べられる期限(乾物や調味料など)。
これらの期限は、未開封が前提になります。
なお、「消費期限」と「賞味期限」の違いについては、HP内の別のブログに
解説してありますので、参考にしてみて下さい。
・「製造年月日」や「加工日」も参考にし、店頭でなるべく新しいものを
選ぶのが基本です。
新鮮な食材の見分け方
以下に代表的な例を挙げます。
・魚:目が澄んでいて張りがあり、体表に光沢があるもの
・野菜:しおれておらず、カット面が変色していないもの
・肉:ドリップ(赤い液体)が少なく、肉色が鮮やかで、においがないもの
これらは、一般的な調理師用のテキストや食材図鑑などで画像が確認できます。
また、実際の魚の目利きに関してはユーチューブに数々の動画が上がっています。
是非、参考にしてみて下さい。
食材購入時の注意
食材購入の際には、保冷剤入りの保冷バッグを必ず持参し、
冷蔵・冷凍品は最後にまとめてカゴへ入れるのもポイントです。
その際、肉や魚のドリップが保冷バックに付着しているケースがありますので、
二次汚染を防ぐ意味でも、使用後はバッグを必ず洗うことも大切です。
冷蔵庫・冷凍庫の賢い使い方
「適温管理」と「詰め込みすぎ」に注意しましょう。
適正温度の目安
・冷蔵庫:1〜5℃
・冷凍庫:-18℃以下
家庭用冷蔵庫はドアの開閉が多いため、温度ムラが発生しやすいのが難点です。
冷蔵庫内に、温度計を1つ入れておくと、管理の精度が上がります。
詰め込みすぎの弊害
冷気がうまく循環せず、菌の増殖に適した温度帯になることもあります。
食材以外のすき間が7割程度に収まるような収納を心がけ、
熱のこもりやすい上段には傷みやすい食材を置かない。
保存容器の活用
密閉容器やチャック付き袋の使用で、汁漏れ、におい移り、乾燥を防止して下さい。
食材を入れたタッパーやジップロックは、「用途別」、「日付ラベル付き」で管理すると、
交差汚染の予防にもなります。
冷凍・解凍のコツ
・急速冷凍(小分け・平たく)で品質保持
あらかじめ冷却しておいた金属製のバットやトレイを用意しておき、
その上で調理済食品の粗熱を取ってから、冷却する方法も実践的です。
・解凍は冷蔵庫内でゆっくりが基本(常温は菌が繁殖しやすい)
きれいなビニール袋を二重にして、水道水を少しづつ出した状態で
流水解凍するのも実践的です。
再冷凍は基本NG
一度解凍したものは、加熱して使い切るのが原則です。
例えば、スーパーで買ったパックの豚肉を食べるの忘れて放置していて、
ドリップがいっぱい出て来た後に、冷凍したものをイメージして下さい。
劣化したお肉は、冷凍後解凍しても元の劣化したお肉に変わりはないですから。
常温保存の落とし穴
常温で保存している食品の中には、「意外と危ないもの」もあります。
注意すべき食品例
・ジャムやはちみつ:糖度が高くても、開封後はカビや酵母が発生することあります。
・醤油、みりん、酒類:開封後は冷蔵保存が基本(特に無添加や減塩タイプ)
・小麦粉、片栗粉:ダニや細菌の温床になりやすいため、夏場は冷蔵庫保管を推奨します。
旬の食材と食中毒リスク
「旬の食材は、安全」とは限りません。
季節ごとに登場する食材には魅力がありますが、その分特有の食中毒リスクも伴います。
夏の代表例:アニサキス(寄生虫)
サバ、サンマ、アジ、イカなどに寄生
対策:食材を使用する前に寄生虫を目視確認する。
できるかぎり加熱(60℃以上)調理したメニューにする。
いったん冷凍(-20℃で24時間)する。
寄生虫は、冷凍処理することでほとんど死滅します。処理は48時間以上が望ましい。
秋の代表例:キノコ類
野生のキノコには毒キノコとの誤認リスクあり
対策:購入品以外は使用しない。知り合いからの譲渡も極力避ける。
家庭での正しい知識や経験を伴わない「キノコ狩り」は危険であることを認識する。
冬の代表例:ノロウイルス
最近では、一年中食中毒事例が見られますが、冬場は特に多く発生します。
生ガキが感染源となるケースが有名ですが、
感染経路はヒトからヒト、調理器具からヒトへの感染も多い。
対策:カキなどは中心温度85〜90℃で90秒以上加熱する。
調理者が体調不良(特に下痢・嘔吐)のときは、調理を控えさせる。
食材管理は、「目に見えない敵」との戦い
食中毒の原因となる細菌やウイルスは、目に見えません。
だからこそ、プロの知識や技術を家庭に持ち帰り、食中毒を防止しましょう。
この記事は食品衛生法、厚生労働省「家庭における食中毒予防の6つのポイント」および
「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」等を参照し、
私が見てきた飲食店や食品工場で実践されていることをまとめたものです。
今後も、食品関連分野に強い行政書士の立場から、役に立つ情報を発信していきます。