たった一度で消費者信頼を失う「食品リコール」の衝撃(後編)
2025年12月04日 16:25
たった一度で消費者信頼を失う「食品リコール」の衝撃(後編)
攻めの食品安全対策とは? 大阪事例から学ぶ3つの教訓
実際に発生した食品リコール事例から、私たちが学ぶべき「攻めの対策」の教訓を見ていきましょう。
*なおリコールとは、製品に設計や製造上の欠陥があることが判明した場合に、事業者が無償で修理、交換、返金などを行う事です。
1. 食品表示の「正確性」:アレルゲン表示のミスはなぜ起こるのか?
2022年、東大阪市内で販売された惣菜において、アレルゲン(小麦・卵)の表示が漏れる事案が発生し、自主回収に至りました。
アレルゲン表示は、アレルギーを持つ消費者の命を守るための絶対的な義務(食品表示法)です。このミスは単なる事務的な間違いではなく、健康被害が発生すれば、事業者は法的責任と、取り返しのつかない社会的な非難を浴びることになります。
【教訓と対策】 ミスの原因は「表示作成時の確認不足」「商品リニューアル時の反映漏れ」「ベテランの退職による知識の引き継ぎ漏れ」が大半です。表示業務を特定の一人に任せきりにせず、第三者を含む「ダブルチェック体制」の構築と、全従業員に対するアレルゲン研修の定期的実施が不可欠です。
2. 製造現場の「清潔性」:食中毒・異物混入はなぜ起こるのか?
2021年、堺市の焼き菓子製造業者で金属片が混入した事案。
2023年、吹田市の飲食店でカンピロバクターによる食中毒が発生した事案。
これらはいずれも、調理器具の管理、温度管理の不徹底、設備点検の不備など、「基本的な衛生管理」の穴から発生しています。特にカンピロバクターは、鶏肉の加熱不十分や、包丁・まな板を介した二次汚染で容易に繁殖します。
【教訓と対策】 HACCPにおける「危害要因分析」を、マニュアルのためではなく、「自社の工場のどこに潜んでいるか」という視点で真剣に行うことです。また、異物混入防止のためには、設備の老朽化や作業手順のムラを徹底的にチェックし、「危険な兆候」を早期に見つける仕組みを導入すべきです。
3. 製品品質の「安定性」:賞味期限偽装が示す組織のモラル
2020年、大阪市内の食品加工業者で、賞味期限を延長した日付が印字されていたことが発覚しました。
これは単なる表示ミスを超えた、消費者を欺く食品表示基準違反です。背景には「在庫処理の焦り」や「経営判断の誤り」などがあると言われますが、いかなる理由であれ、法令違反は企業倫理の崩壊を意味します。悪質な場合は、行政指導・罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象となり、会社は致命的な打撃を受けます。
【教訓と対策】 表示業務を現場任せにするのではなく、経営者自身がチェック体制を整備・監視することが最重要です。また、過剰在庫を防ぐための生産計画の見直しや、倫理観の徹底といった「経営としての安全対策」こそが、こうした偽装を未然に防ぐ唯一の方法です。
行政書士が指南!「攻めの食品安全対策」3つの実践ステップ
行政による衛生監視・法令指導は当然受けるべきものですが、私たち専門家と連携することで、御社でも「予防的・継続的な安全対策」を講じることが可能です。
1. 食品表示の「第三者監査」導入支援
食品表示基準は、アレルゲン、栄養成分、原料原産地など、頻繁に改正が行われています。自社でのチェックには限界があり、意図しないミスが起きやすい領域です。
・行政書士による支援: 最新の法令に基づいた表示内容の定期チェックと適正化を第三者の視点で行い、表示ミスのリスクをゼロに近づけます。
2. 形骸化させない「HACCP運用定着」支援
HACCPの帳票類が、ただ記録を取るための「お飾り」になっていませんか? 現場の負担が大きいだけのマニュアルは、やがて機能しなくなります。
・行政書士による支援: 現場を拝見し、実際の作業フローに即した、無理のない衛生管理計画を作成・見直しします。小規模事業者向けの「HACCPの考え方」導入の定着もサポートします。
3. 「緊急時対応マニュアル」の整備と訓練
万が一食品事故が発生した場合、営業者には保健所等への迅速な報告義務があります(食品衛生法第58条)。この初動の速さが、被害の拡大と企業のイメージダウンを最小限に抑えます。
・行政書士による支援: 保健所等への通報フロー、消費者・取引先への情報公開、リコール商品の回収手順など、初動を迅速に行うための緊急時対応マニュアルの整備を支援します。
まとめ:信頼を守るための「投資」を今すぐに
食品安全対策は、コストではなく、御社の未来の売上と信頼を守るための「必須の投資」です。
法律の義務を果たした上で、さらに一歩踏み込んだ「攻めの対策」を講じる企業だけが、この厳しい時代に消費者の信頼を勝ち取り、持続的な成長を続けることができます。
あなたの会社は、たった一つの食品リコールで失うかもしれない「信頼」を守る準備ができていますか?